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日本の警察がいかに抑制的か知らず、法案の字面だけ読んで「大変な事態になる」と反応しているのでしょう。

「日本の警察」は「抑制的」なのか。
法律は「字面」が全てではないのか。

私が出演するフジテレビの「ワイドナショー」で、お笑い芸人の松本人志さんが「共謀罪」について「いいんじゃないか」と発言しました。まず、テロが怖いという庶民感覚がある。そして、批判する側が極端な言い方をするほど、ふつうの人は引いてしまい、賛成側に流れていくのです。

警察がしばしば「抑制的」でないことをして問題になっているわけだが、それをやむなしとすることに「ふつうの人は引いてしま」わないのだろうか。素朴な疑問。

政府は一般人の自由は侵害しないと言い、その説明を真に受けている人が多い。

そうですよねえ。

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安全と自由の両立、議論不足 三浦瑠麗さんが語る共謀罪

聞き手・岩崎生之助

2017年6月7日07時49分

国際政治学者の三浦瑠麗さん=早坂元興撮影

 「共謀罪」の趣旨を盛りこんだ組織的犯罪処罰法改正案が国会で議論されている。政府は「テロ対策に必要」との立場だが、捜査当局による乱用や「表現の自由」などの侵害を危惧する声もある。



 国際政治学者の三浦瑠麗(るり)さん(36)は、国際的なテロ対策の必要性は認めつつも、「共謀罪」法案には反対している。一方で、法案の問題点を報じるメディアにも苦言を呈する。

《「自由は侵害しない」。そんな説明が本質をかすませる。》

 テロ対策のためにパレルモ条約国際組織犯罪防止条約)に入ることには賛成です。国際的なテロ情報の共有は、枠組みがないとうまく機能しない。そのための国内的な根拠法も不要とは思いません。

 ただ、この組織的犯罪処罰法改正案は、刑法の体系を根底から変えてしまうもの。対象となった277の犯罪が、準備段階で罰するほど重大なものかという検討が足りていません。

 国際社会から見ると、日本はテロへの危機意識が薄い。例えば、イスラエルではホテルに入ってくる車を金属探知機で調べるのが当たり前。日本で、不特定多数の人が集まる「ソフトターゲット」を守るには警備能力の強化が欠かせない。でも、それは法案とは何の関係もありません。

 テロとは「国家や社会に対する罪」です。政府は一般人の自由は侵害しないと言い、その説明を真に受けている人が多い。結果として、「安全」と「自由」は時に対立するものという本質的な議論が深まっていきません。両者のバランスをとるためには「組織的犯罪集団」の定義を明確にし、罰する対象をはっきりさせる必要があります。

 私が特に心配するのがビジネスへの影響です。例えば、企業の節税を手助けする国際的な専門家チーム。日本社会は経済犯罪に非常に厳しい。法人税法会社法なども対象になる今の法案では、彼らがあいまいな定義のまま組織的犯罪集団にされるおそれがあります。国民もメディアも「自分は金持ちじゃない」という意識があり、捜査に厳しい目を向けない。ライブドア事件でのバッシングを思い出してください。

 私は今の法案に反対ですが、朝日新聞を含むリベラルメディアでの反対論には違和感があります。例えば「治安維持法の復活」「警察による弾圧」といった批判。相手の主張を都合良く解釈してたたく「かかし論法」が目立ちます。歴史的な文脈を抜きにして、かつて不適切な取り締まりがあったから今度も危ないという批判はさすがに安直。地に足の着いた批判になっていないから、野党への支持も集まらないのです。

 私が出演するフジテレビの「ワイドナショー」で、お笑い芸人の松本人志さんが「共謀罪」について「いいんじゃないか」と発言しました。まず、テロが怖いという庶民感覚がある。そして、批判する側が極端な言い方をするほど、ふつうの人は引いてしまい、賛成側に流れていくのです。

 国連の特別報告者が法案に懸念を示しました。正しい指摘もありますが、やはり言い過ぎている。治安維持法と結びつける報道の影響もあるでしょうが、日本の警察がいかに抑制的か知らず、法案の字面だけ読んで「大変な事態になる」と反応しているのでしょう。

 やがてこの法案は成立・施行されるでしょう。好ましくない事態が起きるおそれは否定できません。法体系における罪と罰バランスは必要だし、捜査機関の裁量はなるべく小さい方がいい。冷静な批判を続けていくしかないと思います。(聞き手・岩崎生之助)

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 〈みうら・るり〉 東大政策ビジョン研究センター講師。著書に「日本に絶望している人のための政治入門」「『トランプ時代』の新世界秩序」など。