抗酸化の食事

日経新聞の鏑木毅氏の記事。

www.nikkei.com

その記事に関する感想。
mitsuhiro.exblog.jp

脂質燃やす体質へ低糖食
トレイルラン鏑木氏 エネルギー切れしにくく

2017/1/27付
日本経済新聞 朝刊

 トレイルランニングトップランナーである鏑木毅さんは48歳になったいまも世界の第一線で戦い続けている。100マイル(160キロ)を超える山道(トレイル)で過酷なレースに耐える体と心をいかに整えているのか。そこには「低糖」「抗酸化」を意識した食生活があり、老化を受け入れたうえで創造性を働かせる前向きな思考がある。その生き方は加齢と闘う市民ランナーにも参考になる。

トレーニングについて創造的に考え、レースまでのプロセスを楽しむのが重要だという

 鏑木さんが食生活を改め、「低糖」に重きを置くようになったきっかけは米国のトレイルランナーの冷笑だった。レース前に糖質(炭水化物)を体に蓄積しようと、パスタやごはんを腹に詰め込んでいると「いまだにそんなことをしているのか?」とあきれた顔をされたという。

 「米国のランナーはレース中に糖質に頼らず、体脂肪を効率的に燃やしてエネルギーを得るため、低糖質の食事をしていたんですよ」

 運動するためのエネルギーは糖質、脂質を同時に使って生み出されるが、糖質に頼りきった体質になっていると、糖質ばかりが優先的に使われ、脂質が燃えにくい。糖質の貯蔵量は少ないため、走行中にエネルギー切れを起こしやすい。


 一方、脂質は大量に蓄えられているため、安定したエネルギー供給ができる。脂質を効率的に燃やす回路を築いておけば、より長い距離を巡航スピードで走れる。その回路をつくり、体脂肪の燃焼効率を高めるのが低糖質の食事の狙いだ。

 鏑木さんのある一日の食事はこんな具合だ。

 朝食はサラダ、納豆、さんまの塩焼き、ごはんを茶わんに半分。トレーニング後の昼食は野菜をたっぷり入れた水炊き鍋、トースト1枚。夕食は鍋の残り、さしみ、ごはんを茶わんに半分。

 肉より魚が中心。鍋料理が多く、その具で変化をつける。このあと詳述する「抗酸化」のためサケなどの魚やカニもよく食べる。ニンジン、ゴボウなど根菜類を温野菜として食べるほか、風邪をひかないように毎食、ミカン、イチゴなど果物でビタミンをとる。

 練習量が多い日も食事のパターンは変えない。6~7時間走をやっても基本は同じ。強度が高いトレーニングの後は魚など良質のたんぱく質を多めにとるくらいだという。食べる順番には気を使い、いきなり血糖値が上がらないように、初めに炭水化物をとらない。

 「炭水化物は三大栄養素の一つなので、全くとらないわけではない。そこを誤解しないでほしい」と鏑木さんは念を押す。もし低糖の食事を試すなら、急激に糖質を減らさず、まずは甘いものの間食をなくすことから始めるのがいいという。


 鏑木さんが「低糖生活」に先駆けて取り組んだのが「抗酸化生活」だ。

 息がゼイゼイするような激しい運動をすると活性酸素が大量に発生する。活性酸素が体内に増え過ぎると、酸化によって細胞、血管や筋肉を傷め、老化のもとになる。活性酸素を除去して酸化を抑えないとパフォーマンスが落ちる可能性がある。それ以前に運動が健康に結びつかない。

 「健康のことだけを考えたら、ゆっくりランニングがいい。しかし、速くなりたい人はそうはいかない。そういうランナーが健康でもありたいと思ったら、抗酸化物質を含む食べ物をとる必要がある」

 鏑木さんは37歳のときに、上りでの脚力低下を感じ、抗酸化物質のアスタキサンチンリコピン、カプサンチンなどを摂取できる食事(表参照)を始めた。半年ほどで脚力が戻っただけでなく、目が疲れにくくなり、目覚めが良くなり、白髪が減ったという。

 2007年から抗酸化、08年から低糖を意識した食生活は大会の成績に結びついた。40歳だった09年に累積標高が9600メートルにもなる世界最高峰の大会、ウルトラ・トレイル・デュ・モンブラン(UTMB)で3位に食い込み、世界のトップランナーに名を連ねた。

 昨年、こうした経験をもとに「低糖質&抗酸化ランニングのすすめ」(鏑木毅、菊地恵観子共著、実務教育出版)をまとめた。

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